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豊かな心を育む暮らし|08 受け取る練習

3 日前
読了時間: 5分

更新日:13 時間前


私は、人から何かをしてもらうことが、あまり得意ではありません。「迷惑をかけたくない」「自分でやらなければ」「してもらったら、返さなければ」「人に頼むくらいなら、自分でやったほうが楽」。そんなふうに考えるところがあります。もともとの性格もあると思います。人に頼らず、自分のことは自分でする。人に迷惑をかけない。それは決して悪いことではありません。


けれど、それが強くなりすぎると、人から差し出された優しさまで、素直に受け取れなくなってしまいます。誰かが「やるよ」と言ってくれても、「大丈夫」と断ってしまう。何かをしてもらえば、嬉しいより先に「何か返さなくては」と考える。自分が少しくらい大変でも、人にお願いするより、自分でやってしまったほうが気が楽でした。でも、それでは人との関係も苦しくなってしまいます。恋愛も、仕事も、友人も。人と人との関係は、一人だけが頑張って成り立つものではないからです。


「ありがとう」が口癖になりました

いつからだったでしょう。宅配便を受け取ったとき、以前の私は「ご苦労様です」と言っていました。でも、暑い日も寒い日も、たくさんの荷物を抱えて、一軒一軒届けてくださる姿を見てきました。夜7時から9時の時間指定でも、荷物が多い日は9時を過ぎてしまうことがあります。それでも、いつも荷物を丁寧に扱い、気を配りながら届けてくださいます。


もちろん、それは仕事です。仕事には対価があります。けれど、だからといって「してもらって当然」なのだろうか。そう思うようになってから、私の言葉は、いつの間にか「ありがとうございます」に変わっていました。ほんの小さな言葉の変化です。でも「ありがとう」が口癖になるにつれて、私自身も少しずつ変わっていったように思います。


たとえば、誰かがご飯を作ってくれたとき。「ご飯を作ってくれて、ありがとう」。その「ありがとう」は、目の前にある料理だけに向けた言葉ではありません。何を作ろうかと考えてくれたこと。材料を選び、買いに行ってくれたこと。下ごしらえをして、料理をしてくれたこと。そして、その奥にある「美味しいものを食べてもらいたい」という、目には見えない気持ち。そこまで想像すると、「ありがとう」という言葉の意味が、少し違って見えてきます。


見えないものを受け取る

少し前、仲間のひとりが、採れた栗と野菜を届けたいと言ってくださいました。私はすぐに、お礼のお酒を用意して、自分用に買っていたパンも一緒にお渡ししました。何かをいただくなら、私も何かを返さなければ。そんな私のいつもの癖です。


手渡された紙袋は、ずっしりと重たいものでした。家に帰って袋を開けて、驚きました。たくさんの栗が、一つひとつ丁寧に剥かれていたのです。栗そのものだけではありませんでした。これだけの栗を剥くために使ってくださった時間。手間を惜しまず、私のために用意してくださったこと。季節のものを食べてもらいたいと思ってくださった、その気持ち。私は、そんな目には見えないものまで、いただいていたのだと思います。

お金に置き換えることのできないものがあります。何かをしてもらったとき、すぐに「何を返そう」と考えなくてもいい。まず、その人が差し出してくれた気持ちを、「ありがとう」と受け取る。お返しのことを考えるのは、そのあとでも遅くないのだと思うようになりました。


「いただきます」も、受け取る言葉

そう考えてみると、食事の前に言う「いただきます」も、同じなのかもしれません。食材となった命。育ててくださった人。運んでくださった人。料理してくださった人。太陽や雨や土の恵み。目の前の一膳の向こうには、自分には見えていない、たくさんのものがあります。私たちは、それらをいただいて生きています。


「いただきます」「ごちそうさま」「ありがとう」。昔から何気なく使ってきた短い言葉の中には、自分一人で生きているのではないという感覚が込められているように思います。私は、そんな日本の心を大切にしたい。そして、次の世代にも受け継いでいきたいと思っています。


返すのではなく、巡らせる

仕事として行われることには、もちろん対価があります。私自身、仕事の中では、していただいたことに対して、きちんと対価をお支払いすることを大切にしてきました。でも、人と人との間にあるものは、それだけではありません。


人から何かを受け取ったら、同じ人に、同じだけ返さなければならない。以前の私は、どこかでそんなふうに考えていました。でも、優しさは対価ではありません。誰かから受け取った優しさで、自分の心が少し豊かになったなら、今度は自分にできるときに、その優しさを誰かへ渡せばいい。その人がまた、別の誰かへ渡していくかもしれません。受け取る。感謝する。そして、また誰かへ渡していく。それは交換ではなく、循環なのだと思います。


私は今でも、人に頼ることも、受け取ることも、あまり上手ではありません。だから、まだ練習中です。できないときは、「できない」と伝える。助けてほしいときは、お願いしてみる。そして、誰かが差し出してくれたものを、「ありがとう」と、素直に受け取る。受け取ることもまた、豊かな心を巡らせることのひとつなのだと思います。


みなさんは最近、誰かの優しさを、物ではなく、その心ごと、受け取れていますか。


今日も、心に光を。

T.Matsunaga

Founder & Representative / Best Brillanz

 
 
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